「自動車用多板クラッチの摩擦制御技術の発明」が
令和元年度全国発明表彰において「発明賞」を受賞
株式会社ジェイテクトは、「自動車用多板クラッチの摩擦制御技術」の発明で、令和元年度全国発明表彰の「発明賞」を受賞しました。この発明による受賞は、平成29年度近畿地方発明表彰の「日本弁理士会会長賞および実施功績賞」に次いで2度目となります。
本発明の摩擦制御技術は、当社の電子制御4WDカップリングの電磁クラッチに適用されています。電子制御4WDカップリングは、4WD乗用車において必要に応じて適切な前後輪のトルク配分を行う駆動装置です。通常走行ではカップリング内のクラッチの押し付けを行わず前輪駆動で走行し、雪道などで前輪がスリップしそうになる場合には、クラッチを押し付けることで、適切なトルクを後輪へ伝達することができます。
電子制御4WDカップリングの電磁クラッチは潤滑油下で摺動するため、特に潤滑油の粘度が増加する低温域にて、クラッチを係合しない状況(2WD走行時)において、引きずりトルクが増大する課題があります。一方、クラッチを係合する場合(4WD走行時)においても、同様に低温域で伝達トルクが増大します。この温度環境によるトルク変化を改善することで、4WD性能を高いレベルで維持したまま、更なる4WD乗用車の低燃費化の実現が期待できます。
今回受賞した「多板クラッチの摩擦制御技術」の発明は、電磁クラッチの表面形状に着目したもので、電磁クラッチのインナープレート表面にはクラウニングを付与し、アウタープレートでは微細溝ピッチを拡大しました。また、それらと合わせてクラッチ間に発生する潤滑油の動圧に適値を見出しました。これによりクラッチ間隙間を最適に制御し、低温域でのトルク上昇抑制が可能となり、全温度域でのトルク精度を高めることで、走行安定性の向上と燃費改善を実現しました。
この発明技術が電子制御4WD自動車等の低燃費化や環境負荷低減に期待されることが認められ、今回の受賞となりました。
今後も当社では、環境に配慮した高効率の製品の設計・生産を行うことで、省エネルギーを実現し、持続可能な社会づくりに努めてまいります。
【電子制御4WDカップリングの構造】
【従来品および発明品の電磁クラッチ表面形状】
【授賞式の様子】
左から...笹谷 泰規 部長(技術本部 知的財産部)/鈴木 邦彦 G長(ステアリング事業本部 第2ステアリングシステム技術部)/松川 一孝 主任(駆動事業本部 実験解析部)/安藤 淳二 主査(駆動事業本部 第2駆動技術部 JTEKT TORSEN EUROPE S.A. 出向)/安藤 寛之 主担当(駆動事業本部 第2駆動技術部)/津田 拓也 主任(駆動事業本部 実験解析部)