Interviewsアスリート・インタビュー
柳田と過ごした1年が大きな財産に
愛知・星城高から進学した中央大時代は、大学ナンバー1アウトサイドヒッターとして名を馳せた。2021年に鳴り物入りでジェイテクトに加入。1年目から出場機会を確保する中、22年春の黒鷲旗全日本選抜大会が契機に。日本代表への招集により離脱した同期の宮浦健人に代わってオポジットを担い、敢闘選手として表彰される活躍でチームの準優勝に貢献した。
その後、宮浦はポーランドのチームへ。入れ替わりで西田がイタリア・セリエAから復帰したことで控えに回ったものの、2022-23シーズンは慣れないオポジットで30試合に出場し5割に迫るアタック決定率を記録。「試合中、跳躍の高さを維持できているうちはどんな相手とも戦える」という自信も深まった。
大器の片りんを示した一方、年末の天皇杯開幕前には左足首の捻挫で数週間にわたる離脱も経験した。年明けのリーグ戦再開のタイミングにはインフルエンザを罹患するなど、思うようにプレーできない時期もあった昨シーズン。気持ちが切れそうな中で揺るがない指標となったのは、リーグ王者のサントリーサンバーズから加入した柳田の存在だったという。
「練習に対する取り組みは、僕たちよりも1個、2個上の意識を持っていた。挙げればキリがないけど、一つ一つの声掛けや、一本に対する執着であったり。『今の一本はなんで落ちたのか、どうすればとれたのか』『点が取れたからいいのか、もっと良い選択肢があったんじゃないのか』ということをとことん追求できる選手」。
時には食事をともにするなど、その一挙手一投足からトップアスリートの真髄を学んだ。
「バレーができない時期に見えたものも確実にある」。
かつてテレビの中で見ていた憧れの選手と過ごした1年は、大きな財産となっている。
オポジットとして臨んだ初めてのシーズンで印象的な働きを見せた昨季の都築
求められるのは安定感…「点をとることだけ」の難しさ
周囲の期待にも後押しされ、エースとしての活躍が期待される今季。経験を積んでオポジットというポジションの解像度を高める中で、改めて感じる難しさもある。
相手のサーブに備える際、オポジットはレシーブに入ることを免除される。守備陣から一人離れ、味方のサーブレシーブ後の攻撃に全神経を注ぐことが求められる。
「やることが減る分、(守備でもタスクを背負う)アウトサイドヒッターより楽になることもあるかな、とも考えていたけど、別の難しさがある。得点という貢献が1番求められるということは、スパイクの調子が悪ければほかにカバーする手段がないということ。アウトサイドに比べて、圧倒的に貢献できる場面は少ない。良くも悪くも『点をとるだけ』というポジションがオポジット」。
必要となるのは、調子が上がらない時でも最低限のレベルのプレーを維持し続けられる安定感。昨季に見えた課題の一つでもある試合中の「ガス切れ」を防ぐため、新たにチームに加わった経験豊富なストレングス&コンディショニングコーチと肉体改造にも励む。
「ウエイトトレーニング一つとっても、今やっていることが何に繋がっていくのかということをこれまで以上に知識のあるスタッフに聞くようになった」という行動の変容も。困難に直面し、改善を図ろうとする中で、アスリートとしての意識が高まっていることが伺える。
「一番点をとりたい」…根底にあるのはチーム愛
この日、見る者の度肝を抜くスパイクを見せた練習中からインタビューの最後にいたるまで、大きな感情の起伏をほとんどみせなかった都築。唯一破顔し、身振りを交え強く喜びを表現したのは、実戦形式のボールゲームで同じチームの仲間がビッグプレーを見せた時だった。
「自分のプレーで感情を出す、っていうのはあまりない。確かに、仲間の好プレーの時の方があるかもしれない」。
理由を探る中で、印象的だった言葉がある。
「自分は、個人の活躍という部分にすごく大きな執着あるわけではないというか。とにかくこのチームで勝ちたい、ジェイテクトで勝ちたいという気持ちが一番大きいんだと思う。極論、チームを勝たせることができるなら自分が1点もとらなくたっていい」。
続く一言が秀逸だった。
「ただ、自分が一番貢献できるのは得点。だから一番点をとりたい」。
根底にあるのは、深いチーム愛。「人間的にもこのチームが好きなので」。屈託なく笑みを浮かべたアタッカーが感情を爆発させる時、4季ぶりのリーグ優勝はSTINGSの手中に収まっているはずだ。
(文中、敬称略)