自然共生・生物多様性
化学物質管理の徹底および環境負荷物質の低減
地球の生態系や人の健康に悪影響をおよぼす環境負荷物質に対し、使用・排出規制が強化されています。企業には生産から廃棄に至るまで、すべての段階において徹底した環境負荷物質管理と削減対策、そして各種規制の遵守が求められています。モノづくりの企業にとっての環境負荷物質の削減は社会的な責務です。ジェイテクトでは、生産時の使用量・排出量を減らすことはもちろん、製品に含まれる環境負荷物質を把握し、管理を徹底しています。
生物多様性の保全
自然破壊の拡大に伴う生息・生育地の縮小により、地球上の生物の多様性が急速に失われつつあり、SDGsにおいても『生物多様性損失の阻止を図ること』が目標の1つとしてあげられています。企業活動は、自然界から受ける恩恵によって成り立つと同時に、生物多様性に多大な影響を与えており、企業自らが自然生息地の保護をはじめとした取組みを進めることが重要と考えます。ジェイテクトでは、『生物多様性保全行動指針(2011年3月策定)』に生物多様性の保全を命と暮らしを支える重要な社会的課題と位置付け、各工場で地域の特徴を生かした取組みを推進し、生物多様性に関する活動の輪を広げています。
2025年環境行動計画/2023年度活動実績
区分 | 取組み項目 | 目標・取組み方針 | 2023年度活動実績 | 評価 |
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化学物質管理の徹底および環境負荷物質の低減 | (1)生産活動における環境負荷物質の低減 | ①PRTR対象物質の排出・移動量の低減 ②生産工程での灯油使用全廃による環境負荷物質低減 |
①PRTR対象物質の排出・移動量73.8t(2022年度比+42.7t) ※法改正に伴い、対象となる化学物質の増加によるもの ②生産工程における代替油への切り替えについては対象5工場中3工場が完了 ※PRTR対象物質:前年度比増加要因⇒法改正により新たに対象となった化学物質分が増加 |
〇 |
生物多様性の保全 | (2)生物多様性への取組み | ①「生物多様性保全行動指針」に基づく環境活動の推進 ②ジェイテクトグループで「地域とつなぐ」生物多様性保全活動の推進 ジェイテクトグループ全体で2025年度までに活動参加者数を3,000人以上とする。 |
①子供向け環境教育の開催、各自治体主催の活動への参画 ②2023年度生物多様性活動参加実績 ジェイテクトグループ全体で2,319人(2023年度目標2,280人) |
製品に含有する環境負荷物質の全廃
製品含有化学物質管理のガバナンス
研究開発本部領域長が委員長を務める「製品環境委員会」を中心とした製品含有化学物質管理体制を構築しています。同委員会は年2回開催され、会社方針に基づいて課題の明確化と目標設定をするほか、方策の妥当性協議および決定、進捗状況の管理を行っています。また、同委員会の下部組織には7つのワーキング・グループを設け、製品含有化学物質管理に関する全社方針の策定、国内外の体制構築、社内外の監査/教育、製品含有化学物質変更の際の設計変更や製品の切り替え推進について、役割分担と責任の所在を明確化した上で、活動を推進しています。
主要な2023年度実績
製品環境委員会での主な取組み
方針策定ワーキング(上表①)では業界ベンチマークを実施し、当社の課題を改めて抽出、方策の立案と対策を推進しました。また、それらの対策を仕組みに反映するため、体制つくりワーキング(上表⑥)において根幹規程の刷新と関連規程の改訂を実施しました。特に属人的な判断ではなく、組織的な判断を実現するため、各部門の役割と責任を明確にした上で、様々なケースを想定した複数の業務フロー図を作成し、運用を開始しました。一方、現状に満足することなく 「地球のため・世の中のため・お客様のため」 になるかということを我々の判断基準として、今できていないことを確実にできるよう、全員参加による対話と議論を丁寧に重ねながら、顧客要求を超える自律した製品含有化学物質管理体制の構築を目指しています。
生産活動における環境負荷の低減
PRTR法対象物質の削減
ジェイテクトでは、生産活動により環境中に排出される化学物質の管理と削減に取り組んでいます。
2023年度のPRTR法対象物質の排出量は約73.8tで、前年度と比較し、約42.7t増となりました。これは法改正により新たに対象となった化学物質分として約55.4tが増加した為で、24年度以降、当該化学物質の削減に取り組んで参ります。
なお、PRTR法対象物質のうちVOC排出量は約23.8tで、前年度比約3.8t減と順調に削減が進んでおりますが、今後さらなる使用量削減に向けて、『2025年 環境行動計画』に基づき、生産工程における灯油使用の全廃に取り組みます。
PRTR法改正対応
ジェイテクトでは、2023年4月1日より変更(追加・削除)される届出対象化学物質注に対応するため、業務要領書の見直し・社内教育の実施等管理体制を見直して改正に備えて参りました。2023年度分の排出量・移動量の届出は、改正により追加となった対象物質についても適切に届出が出来ております。今後も法令順守のため、管理体制の強化を継続して参ります。
注:PRTR法第一種指定化学物質及び特定第一種指定化学物質
燃料用途以外での灯油使用全廃の取組み
ジェイテクトでは、有害物質の削減、安全・防火面でのリスク削減のため、2025年度までに燃料用途以外での灯油の使用を全廃する取組みを行っています。
2022年度より生産工程における代替油による長期運用試験を開始し、2023年度中に対象5工場中3工場で切替が完了しました。2024年9月までに残り2工場の切替も完了予定です。
PCB機器の適正保管と管理
絶縁油に広く使用されていたPCB(ポリ塩化ビフェニル)は、PCB廃棄物特別措置法により保管・廃棄・届出が義務づけられています。ジェイテクトでは法に基づき届け出を行い、適正に保管し、廃棄しています。
2023年度は低濃度PCB廃棄物として保管していた設備の処分を実施しました。また、生産設備に使用されているコンデンサの中で、低濃度PCB汚染の恐れのあるコンデンサの更新を行っています。取り外した小型のコンデンサは濃度分析を行ったのち、適切に処分を実施してまいります。
土壌・地下水に関する取組み
過去に使用していた洗浄剤等に含有されていた「トリクロロエチレン」による地下水汚染について、ジェイテクトでは2工場で継続的な対策を実施しております。
刈谷工場では「敷地外への流出防止」を、岡崎工場では「敷地外への流出防止」に加えて「完全浄化」の取組みを行っております。
流出防止対策としては、1998年以降、揚水ばっ気方式(※1)を用いて、工場敷地外へ流出を防止する対策を継続で実施しております。
岡崎工場では、2020年にクロロエチレンを分解する微生物の活性を高める栄養剤を地中に注入し、一時的にすべての地点で基準値未満を達成しましたが、基準値未満での濃度上昇が見られましたので、2024年度には、さらに栄養剤を注入する計画をたて、再上昇の防止を検討しております。
これらの取組みと地下水の測定結果については定期的に行政への報告を行うとともに、地域住民への説明会として「地域懇談会」を実施しております。
(※1)揚水ばっ気方式:地下水をくみ上げて噴霧し、エアを吹き付けて有機溶剤を気化・分離し、活性炭に吸着させることで除去する方法
トリクロロエチレン測定値(最大値)
刈谷工場
2022年度:0.313mg/L 2023年度:0.289mg/L 現在の状況:浄化中
岡崎工場
2022年度:0.008mg/L 2023年度:0.005mg/L 現在の状況:浄化中
フロン機器代替化の取組み
モントリオール議定書、オゾン層保護法に基づき2020年より、HCFC冷媒の生産が中止されています。
ジェイテクトでは、R22の空調機の更新を順次行い、オゾン層の保護及び温室効果ガスの削減につなげていきます。
生物多様性への取組み
生物多様性保全行動方針
ジェイテクトでは、事業活動による環境負荷を低減し、生物多様性に配慮するために、「ジェイテクトグループビジョン」の「2015年環境行動計画」に基づいて、2011年3月「生物多様性保全行動指針」を策定し環境活動を推進しています。
生物多様性保全行動指針
目指す姿
ジェイテクトの生物多様性保全活動は「各工場に生息、生育する希少な生き物の保全」、各工場を取り巻く「地域の自然環境の整備」、継続的に生物多様性保全を図るための「環境人材の育成」という3つの取組みを柱として進めています。各工場における希少な生き物の保全に当たっては、専門家や学識経験者の意見を踏まえた、客観的な評価に基づき取り組んでいます。
事業活動における生物多様性のリスクと機会
ジェイテクトの事業活動と自然資本は相互に影響を受けています。原材料調達から始まる事業活動のライフサイクルにおいて、水やエネルギー等の資源の使用や大気、水域への排出等をリスクとして捉え、また車両等の環境性能向上に繋がる製品の提供によるCO2排出量の削減による気候変動緩和、森林保全活動による水源涵養機能の維持により、事業場立地場所の水害リスクの低減に繋がる等、生物多様性への機会として捉えています。

生物多様性へのインパクト
ジェイテクトグループの全拠点、及び日本の主要仕入先40社(調達金額比率70%に相当)の拠点を対象に、WWF生物多様性リスクフィルター(BRF)※ を使用して生物多様性への圧力評価を実施しました。その結果、リスクが高い(5段階評価中4.5以上)と評価された拠点はありませんでした。
今後も私たちの事業活動が大気・水域への排出や土壌汚染による生物多様性への影響を与えないよう最大限の活動を推進してまいります。
※WWF生物多様性リスクフィルター(BRF)
World Wide Fund for Nature(世界自然保護基金)が公開している生物多様性に関連したリスクツール
ジェイテクトの生物多様性保全活動マップ
ジェイテクト及びジェイテクトグループは、国内から海外まで世界中に事業場が広がっています。それぞれの事業場で活動を進め、その活動をつなげることで、点を面に生物多様性の活動を広げていけるよう、各事業場が活動テーマを定め、継続的に活動しています。 今後も活動の輪を広めるべく、推進してまいります。
■海外
代表的な取組み―海外事例
マングローブの森活動<アセアン>
ジェイテクト・アジア・パシフィック(JTAP)、ジェイテクト・インドネシア(JID)、ジェイテクト・インドネシア・セールス(JIDS)は、インドネシア政府のマングローブ林再生プログラムと連携し、ムアラバル村の海岸線に植樹するマングローブ2,600本を寄贈、植樹しました。この活動は私たちの土地を守るだけでなく、海洋生物の隠れ家を作り、二酸化炭素を吸収することにも貢献しています。
ジェイテクトが寄贈した樹木は、西ジャワ州森林局へ森林再生に関して登録されます。私たちは森林再生の重要性と環境へのプラスの影響を考慮して、この活動を年次会社方針として掲げています。
■国内
▶ 名称をクリックすると取組みがポップアップします。
主な実施事項
東京グリーンシップアクションへの参画
関東工場:羽村事業場では、東京都及び地元NPOと協定を締結して、東京グリーンシップアクションに参画しております。東京グリーンシップアクションとは、東京都の指定する保全地域において、自然と触れ合いつつ自然環境保全活動を行うものです。
羽村事業場は『横沢入里山保全地域』(あきる野市)での活動に参加しており、23年度は稲刈りイベントを実施しました。今後もこの地域での里山保全活動に参加をして、地域への貢献を続けて参ります。
『経団連生物多様性宣言イニシアチブ』への賛同
ジェイテクトでは、2021年12月に『経団連生物多様性宣言イニシアチブ』への賛同を表明しました。
この取組みは、生物多様性条約締約国会議(COP)等における日本経済界の発言力向上を目指すものです。
今後は賛同企業・団体と連携を図りながら、取組みに協力して参ります。

環境省「生物多様性のための30by30アライアンス」参加
ジェイテクトは、「生物多様性のための30by30アライアンス」に2022年4月の創設時より参加しています。 この取組みは2030年までに生物多様性の損失を食い止め、回復させる(ネイチャーポジティブ)というゴールに向け、自国の陸域・海域の少なくとも30%を保全・保護すること(30by30(サーティ・バイ・サーティ))の達成を目指すものです。 今後も参加する行政・企業・団体等と連携を図りながら、目標達成に向けた取組みへ積極的に参加して参ります。

オールトヨタ グリーンウェーブプロジェクト
ジェイテクトは、生物多様性の保全活動にトヨタグループ各社と連携して取組む「オールトヨタ グリーンウェーブプロジェクト」に参画しており、ジェイテクト田戸岬工場における「コアジサシ営巣地保全取組み」は、グリーンウェーブプロジェクトを通じて、同じく衣浦地区に工場をもつトヨタグループ3社(株式会社豊田自動織機、トヨタ自動車株式会社、株式会社アイシン)との"つなぐ"活動に発展しました。
今後も「衣浦湾 コアジサシ保全プロジェクト」が全国のコアジサシ保全モデルになれるよう一層取組みを拡大していきます。
グリーンウェーブプロジェクトの活動ロゴ
日本自然保護協会
ジェイテクトは、2020年に公益財団法人日本自然保護協会に加入しました。今後は、日本自然保護協会と連携した教育プログラムの開発や、会員企業、団体等の協働、連携による枠組みの拡大等、取組みの更なる充実を図って参ります。