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ラボだからこそできる試行錯誤
~次世代に地球を残すために~【後編】

早川 隆(生産企画部PE室 室長)
矢島 禎則(生産企画部PE室 プロジェクトリーダー)
久野 篤(生産企画部PE室)
平野 哲郎(CN戦略室 室長)
三尾 巧美(蓄電デバイス事業部 部長)

Interview

2024年6月、愛知県刈谷市のジェイテクト本社に「CNラボ」が完成しました。
CNラボとは、太陽のエネルギーを電気としてだけでなく水素としても貯蔵・利用する再生可能エネルギー100%の自立型システムであり、その設計から施工まで全てジェイテクト社員が手掛けています。

構想から約3年というスピード感で完成したCNラボには、かけがえのない地球を次の世代に残したいという思いに突き動かされたエキスパートたちの存在がありました。

前編ではジェイテクトのカーボンニュートラルへの取り組みとCNラボの概要を紹介し、後編ではCNラボ立ち上げに携わったメンバーの情熱に迫ります。
(インタビュー日:2024年8月21日)

▶▶ラボだからこそできる試行錯誤~次世代に地球を残すために~【前編】はコチラから

世の中にまだ無いものをジェイテクトがどこよりも早く完成させたい・・・この二人がいてくれたからこそ、CNラボの構想をカタチにできた

カーボンニュートラル達成のため、再生可能エネルギーで発電するのみならず、最大限活用するために"電力を貯蔵するシステムを自分たちでつくろう" "再生エネルギーで水素をつくろう"という二つの解を重ねたシステム構想が立ち上がった。

「再生可能エネルギーで発電して使い切れなかった電力を"電池で貯める"と"水素で貯める"というハイブリッドシステムは世の中でまだ誰も完成させられていない。だからこそ、ジェイテクトがどこよりも早く、日本の中でモデル的に挑戦してみるのが正しいことだと思った」と語ったのは、ジェイテクトグループのカーボンニュートラルの取り組み全体を統括するCN戦略室長の平野。

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「自分たちの手でできる」そんな確信はあった。ジェイテクトにはモノづくり設備で培った設計・制御システム技術に強みをもつ人がいる、そして工場のインフラ技術を支えている人がいるからある。さらにジェイテクトが持つコンピタンスも組み合わせ、再生可能エネルギーの弱点である不安定な電圧をLibuddyが上手く補って効率的に発電できたら面白い。どんどん発想は湧きあがる。

ただ、やはり世の中に無いものをイチから始めるのは手探り状態でもあった。加えて、ジェイテクトでは2002年から燃料電池車向けの高圧水素製品を生産しているものの、その技術を今回のプロジェクトに活かすことは難しそうだという壁に当たった。

 

プロジェクトを進めていく上で直面する困難を、どう乗り切っていったのか。

CNラボの構想をカタチにする上では、ある二人のシニアのサポートが欠かせなかった。設備設計やシステムアップを全て内製で、しかも3年というスピードでできた最大の理由は、この二人がいてくれたからこそ」と、早川は同じPE室に所属する矢島(写真左)と久野(写真右)を紹介した。

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ジェイテクトでは定年を控える社員に対して、チャレンジしてみたい部署に異動できる再雇用者向け社内公募制度がある。CNラボの構想があることを知った矢島と久野は社内公募制度を活用し、3年前にPE室に配属された。

矢島は入社以来、岡崎工場で原動力設備の内製を担当していた経歴から、CNラボ全体を制御する装置の設計から施工までの内製を任された。
CNラボは多種多様なメーカーの機器を組み合わせて構成しているため、通信規格や通信速度が異なる機器を連携させる必要があった。

「こんなにたくさんの機器に対して、仕様に合せた通信カードを個別設定して組んだ経験は今までになかった」と、一般的な制御システムの構築と異なる手法が必要だったことが苦労した点だったと振り返るが、平野と同じく「できるという確信はあった」と答えた。

そして、過去に工作機械事業で設備設計を担当し、生産技術開発部では平野と共に設備開発をしたという縁もあってPE室に異動した久野は、CNラボで水素の生成・貯蔵・運搬の基礎評価、設備構想設計から導入までを担当した。

「これまで生産技術開発部では研削盤やプレス機といった様々な設備を扱ってきたので、新しい設備をつくるという観点ではそれほど大きなハードルは感じなかった。そうは言っても、水素を扱った経験は無かったため、可燃性ガスである水素を安全に取り扱うための準法を調査・確認しながら各装置の成立性を検討する日々だった」と振り返った。

長年の経験で培ってきた知見を活かすだけではなく、未経験の分野にも果敢に挑戦を惜しまなかったことが成功の秘訣だった。

 

矢島と久野が「久しぶりにmol(モル)って単位聞いたよね」と口を揃える中、「アルカリとアルミの量をちょうど良い比率で反応させるための計算にはmolが必要になる・・・」と化学を得意とする蓄電デバイス事業部長の三尾が即座に反応する。

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三尾は、高耐熱リチウムイオンキャパシタLibuddy®をCNラボに導入するにあたって「電気は目に見えないからこそ、安全性に最も注意した」と強調した。

一般的に42Vの電圧でも人は感電死する危険性があると言われているが、CNラボではその10倍を上回る600Vという高い電圧を扱うために、100個以上のLibuddy®を組み合わせて使用する。実証試験においてエンジニアが感電するようなことは絶対にあってはならない。

そこで、Libuddy®1個ずつを樹脂部品で保護・絶縁したモジュール(組電池)を組み上げ、それを更にコンテナで覆った。モジュールはダカール・ラリーで実績のある仕様を採用しており、オーバースペックであることは否めないが、安全には代えがたい。

ジェイテクト製高耐熱リチウムイオンキャパシタが日野チームスガワラのダカール・ラリー2022完走に貢献
07Libuddy組み合わせ800.jpg(写真左から)Libuddyのセル単体、黒色の容器の中で複数のセルを直列したモジュール、モジュールが設置されているCNラボのコンテナ

 

三尾は「キャパシタと再生可能エネルギーを組み合わせると発電効率が上がるという先行研究が日本のある大学でされていたため、CNラボにLibuddy®を導入すると何かしら良い効果があるのは最初から分かっていた。一方で、矢島さん達がキャパシタの使い方を変えてくれたのは驚きだった。Libuddy®を一番上手に使ってくれた!」と矢島の発想を評価しながら、ジェイテクトならではのキャパシタの使い方を紹介した。

先行事例では、日の出・日の入りといった太陽光が少ない時間帯に発生するわずかな発電量をキャパシタで上手く回収して有効活用する方法について研究されていた。

一方、CNラボでは、日中の時間帯でも太陽が陰ると極端に出力が低下する点にチームが着眼した。
安定して発電しているときの電圧は600Vだが、太陽光パネルが陰って発電量が落ちると電圧は急降下する。そこに大きな電力の出し入れが得意なLibuddy®で急降下した電圧を一時的に持ち上げて、電圧の動きを緩やかににするという使い方に転換したのだ。無駄なく再生可能エネルギーを活用できる施設インフラづくりもCNラボでは重要なこと。

 

こうして、様々な試行錯誤の末にCNラボは完成した。

「完成したときはグッときた。社外の方が興味をもって見学に来てくださるような施設があるのは嬉しいし、誇らしいこと」と感慨深い様子の久野に、
「矢島さんも久野さんも、やると言ったらとことんやり切る責任感が凄い。新たなことに前向きに挑戦できる職場環境もあって、失敗しても次に向けて頑張ろうと楽しそう。技術力もあって意欲もある人と会社の目指すことがマッチングできて良かった」と早川が二人を労う。

すると矢島は「CNラボをきっかけに、安価に水素を生成する方法を構築し、また "水素=爆発"というイメージを払拭していくことで水素の利用促進に貢献していきたい」と、早くも次の目標に意気込む。

CNラボのその先は・・・自分たちの次の世代に地球を残すために

目下の計画について、2025年度後半からジェイテクト花園工場で"CNプラント"として実証予定だと早川は明かした。CNラボと比較すると、太陽光の発電規模で言えば7倍、水素で言えば80倍の規模になる。

「将来的には花園工場以外にもCNプラントを横展開してノウハウを蓄積し、更にジェイテクトのコンピタンスを組み合わせてレベルアップしたい。いや、必ずレベルアップする。どこまで自分たちの力で100%グリーンにできるか、挑戦したい」と語気を強める平野に、「そう、まだまだ伸び代がある。Libuddy®の旨味が最も出る使い方が何であるかというのは今後も検証していきたい」と三尾も同調した。

「カーボンニュートラルはジェイテクトのためだけでなく、自分たちの子供、孫、その先の世代に地球を残していくためになる。こんなにやりがいのある仕事はないな」と言う早川に、「本気でやりたいから、再雇用の身でもまだまだやることは尽きないね」と気概を見せる矢島と久野・・・次なる目標が山のように膨れ上がっていく様子の五人だ。

将来に向けて一番大切なのは、「ジェイテクト社外にもカーボンニュートラルの仲間を広げること」だと五人は口を揃える。CNラボをきっかけに、ジェイテクトがカーボンニュートラルの世界を作る一翼を担う存在になるのだという壮大な目標を最後に明かしてくれた。

省エネやカーボンニュートラルと聞くと、我慢が強いられる難しいことだと捉えてしまう人もいるかも知れないが、そうではない。地球のために仲間と一緒に協力しながら、そして何より挑戦を楽しみながら取り組めば達成できるはず。

 

ジェイテクトのカーボンニュートラルへの挑戦は続く。

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