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音楽の世界でも足元から支えるベアリング
真矢(LUNA SEA)
Interview
ジェイテクトが手掛けるベアリングは、自動車や鉄道、建設機械などあらゆる産業に、性能や品質の高さで貢献をしています。
重厚長大な産業分野だけではなく、ロードバイクではONI BEARINGとして、スケートボードでは株式会社JMのOEM商品NiNjAブランドとして店頭に並ぶなどスポーツの分野でもジェイテクトのベアリングが足元を支える存在になっています。
そして実は、音楽の世界でもベアリングが活躍しているのです。ジェイテクト製のNiNjAブランドのベアリングは、パール楽器製造株式会社が手掛けるドラム用ペダルに使用されております。
ベアリングの違いがドラムの音をどう進化させるのか。今回のJTEKT STORIESでは、NiNjAベアリングを手掛けるJMとドラムメーカーのパール楽器製造の協力を得て、NiNjAベアリングが搭載されたドラムペダルを使って2024年に41本にも及ぶ全国ツアーを敢行したLUNA SEAのドラマー・真矢さんに直接お話を伺うことができました。
そこには日本を代表するミュージシャンの、ドラムセットの中の小さな部品であるベアリングにまでこだわって最高の音楽を追求するひたむきな姿がありました。
(インタビュー日:2025年1月17日)
Main Theme
ベアリングの技術は音楽にもつながる
ジェイテクト製のセラミックボールベアリングは、1995年に設立されたベアリングブランドNiNjAに採用されています。ジェイテクトとNiNjAは二人三脚で、セラミックボールベアリングで世界トップクラスのスケートボーダーの活躍を足元から支えています。
このスケートボード用に開発されたベアリングの滑らかに回転し、摩擦が少ない低トルク性能がスケートボードの世界以外にも、その価値を提供しています。
それは音楽の世界です。
バンドの要ともいえるドラム。スティックでシンバルやスネアドラムなどを叩くことをイメージする方が多いかもしれませんが、バスドラムという楽器は足元のペダルを踏んで演奏します。このペダルの中にはベアリングが使われており、ベアリングの性能がバンドサウンドを足元から支えているのです。
Index
■LUNA SEAとは
■真矢のドラムとジェイテクト
■時を経ての再生と進化、軽さが生み出す重さと緻密さ
■もしかしたらあの伝説のライブでも・・・
■ロックバンドも見える化とカイゼン
■技術の進化は、楽しみの変化
■ライブはお客様との共創の場
■35周年の集大成、2月の東京ドームに向けて
LUNA SEAとは
日本中の誰もがその名を知ると言っても過言ではないLUNA SEAについて、ここで改めて紹介する。
1990年代初頭、日本のロックシーンに嵐を巻き起こし、メジャー3rdシングルの「ROSIER」で大ブレイク。月のように変化に富み、海のように深い音楽性と、メンバーの個性によって一時代を築き、日本の音楽業界に輝きを放つも2000年に一度終幕を宣言。2010年に再結成を果たし、ライブを中心に積極的に活動を再開。2024年には結成35周年記念として、過去のツアーを再現する「ERA TO ERA」を全国41本敢行。2025年2月に35周年の集大成として東京ドームライブを控えている、日本を代表するロックバンド、それがLUNA SEA。
・・・という感じで紹介するのはどうかと問いかけると「それ以上でも以下でもございません。35年の歴史がすべて詰まっております」と、にこやかに答えるのは、LUNA SEAのドラマー真矢だ。
真矢のドラムとジェイテクト
LUNA SEAの真矢といえばこの写真のように巨大な要塞を思わせる、多種多様なドラムとシンバルで構成されるドラムセットだ。
真矢が使用するドラムセット
このドラムセットの足元にある太陽の絵が描かれたドラムはバスドラムと呼ばれ、ドラムセットの中で最も低い音を出し、リズムの土台となるものだ。バスドラムはペダルと呼ばれる装置を足で踏み込むことでヘッド(膜)が叩かれて音が鳴る。
2023年5月17日、真矢はペダルに使用するベアリングを交換したことを自身のインスタグラムに投稿した。
「今回のセットも進化してるけど、ペダルも進化しています✨✨✨スケートボード用ベアリングで有名なNiNjAさん@ninja_bearingから、最高級品のセラミックベアリングBADDEST SPEED FASTを提供していただきました💕」
2009年パール楽器はドラムペダルでNiNjAベアリングを採用。以来「PEARL NINJA ベアリング」がドラムペダルに組み込まれており、もちろんジェイテクト製だ。その中でも今回は、真矢のためにNiNjAベアリングの中でも、高潤滑オイルを使用し圧倒的な低摩擦を誇る超高性能製品を初めてドラムペダルに採用することとなったのだ。
真矢が使用するペダルとベアリング搭載位置
時を経ての再生と進化、軽さが生み出す重さと緻密さ
2023年のインスタグラムでの投稿にもあったように、真矢が「最高のアイテム」と評したベアリング。ERA TO ERAツアーに向けてなぜベアリングにまでこだわったのか。
「ERA TO ERAは1992年から1999年までの7年間のアルバムツアーを再演するもの。若い頃に勢いで演奏をしてきた曲に、どう緻密さを上げ、表現の幅を広げていこうか」とメンバーと話し合ってきた。完璧なものを目指して、演奏面だけでなくドラムセットの部品もあれこれと試行錯誤する中、「そこにいる竹川さんから"ベアリングを交換しませんか"と、今まで考えもつかなかった提案を受けたの」とインタビューに同席していたパール楽器の開発担当者、竹川氏に笑顔を向ける。
ベアリングを交換した感触の違いを伺うと「もちろん今までも良い機材だったけれど、軽さ、反応、スピード感、全く違った」と、それはお世辞ではなく、本気の賛辞と伝わる表情だった。「機材ではなく、もう自分の足みたい」とペダルと人馬一体、一心同体となっているようだ。
真矢は身体の使い方を4つに分類する4スタンス理論を用いて「4スタンス理論では僕はA1タイプ。軽くて速く動かせるものと相性が良いんです」と、自身の原点でもある和太鼓のバチもドラムスティックも、楽器を始めた当初から軽いものを愛用しており、足元も手元も軽いものと相性が良いと明かした。
ベアリングを変えて摩擦が少なくなり、これまでより一層ペダルを軽く、そして速く踏み込めるようになったことで、真矢が求めた"音の重み"と"1/1000秒のリズムコントロール"が実現した。ジャストのテンポではなく1/1000秒単位でキックを速めたり遅らせたりすることにより、曲に疾走感や間を持たせ、彩りを更に豊かにするのは、一流のドラマーだからこそできる技量の高さとこだわりである。
そうして発表から30年以上経た楽曲は、リハーサルの中で蘇らせた身体に残った記憶とこだわりの機材、そして経験に裏打ちされた演奏技術がつながることで「過去の再現ではなく再生と進化にたどり着いた」のだと、新たな境地を切り拓いたことがインタビューの冒頭でも十分に伝わり知ることができた。
もしかしたらあの伝説のライブでも・・・
真矢曰く「ドラムは全身運動だからバンドの中で一番労働が多い楽器」だそうだ。2時間近くにもおよぶライブ、それに向けてのリハーサルでのドラマーの過酷さを語る中で「昔はよくライブ中に足がつっていた」という衝撃的な発言も。
当時のペダルには摩擦抵抗も多かったことによりペダルを踏み続けることが大変だったが、若さゆえの粗さと勢いでライブを乗り切ることができていたと振り返る。あの鹿鳴館の伝説のライブでも、東京ドームの伝説のライブでも、ドラムセットの裏で真矢の足はつっていたそうだ。
ならばと、ド派手な演出と衛星放送での生中継もあった1996年12月23日に横浜スタジアムで開催された、真冬の野外ライブでのドラムごと吊り上げられて縦方向に回転しながらドラムを叩き続けていたときも足をつったのかと尋ねると、「あのときは足がつらなかったよ。冬の野外は空気が乾燥していて、軽く叩くだけで音が響いたからね」とあっけらかんとした答えが返ってきた。一方で、当時の宙吊り機材の種明かしをしつつ、逆さ吊りになった状態でドラムを演奏する瞬間は重力でペダルがより重くなっていたので「あの時このペダルがあったら楽だったろうね」と、多くの人の記憶に残るあの伝説の一夜を普段とは違う角度で話す一幕も。
ロックバンドも見える化とカイゼン
前述の「冬の野外では空気が乾燥しているから・・・」という話に立ち戻るが、温度と湿度が変わると音の響きが全く違うため、ライブではドラムセットの周りに温度計と湿度計を置いているとのこと。そこに加えて「今日はちょっと音が違うなというときに原因が分かると対策ができるじゃないですか」と音楽の世界でも、製造業と共通する"見える化"と"カイゼン"の精神が宿っていることを垣間見ることができた。
ライブでは機材の周りに扇風機を置いてドラムにとっての最適な環境づくりをスタッフとしていると話しながらも、スタジオでのリハーサルでは「ギターの連中が"寒い"と言ってエアコンを切るからドラマーは大変」と他のメンバーの顔が思い浮かぶエピソードも披露した。
この周りに温度計や湿度計、扇風機が置かれている
技術の進化は、楽しみの変化
インタビューでは変化球として、打ち込みやボーカロイドなど電子機器を用いた音楽に対する見解についても伺うと、広い視野と考えを覗かせるところがあった。
「ボーカロイドと一緒にレコーディングしたこともありますよ」と多様な音楽活動の一面について、こう続けた。「難しかった。ボーカロイドはブレスをしないんですよ。(ボーカルから)ドンと曲に入るとき、僕は隆一くんのブレスに合わせて入っていたんだな、とこのとき気付きました」と、ドラマー視点で実感したボーカロイドとボーカリストの違いを話しつつ「作品としてはすっごく良いものが出来た」と、新しい技術との融合の難しさと楽しさを語る真矢の姿があった。
そこに「クルマでもそうですよね?MTからATになったとき最初は違和感あったけど、今は当たり前になっている」とモビリティ産業の話につながり、自身が欧州系の自動車に乗っていることを明かし「2年前から自動運転機能を使用しているけど、ラクになったし楽しさが広がった」と話す。高度運転支援システムによってハンドル操作の負担が減ることによって、景色を楽しみながらドライブできること、オーディオやカーナビを安心して操作できることを挙げた。「ハンドル操作もドラムの演奏もストレスがなくなると考える余裕が生まれますよね」とクルマとドラムの共通点を述べ「自分の運転と調和する自動運転で、安心して楽しくドライブできる感じのLEXUS LCがあったらほしいですよね~」といった声もあがり、変化球の質問にも見事なクリーンヒットが返ってきた。
ライブはお客様との共創の場
前述の変化球の質問への回答「考える余裕が生まれた」という話題から、ライブ中に考えていることは何かと投げかけると、「1曲目は曲の入り方だけど」と前置きをした上で「お客さんの空気感を考えている」とはっきりと答えた。
LUNA SEAのライブにはSLAVEと呼ばれるファンクラブの会員のみならず、ファンクラブ会員ではない一般販売でチケットを購入する人々が集まる。これらのお客様の盛り上がりをまずは第一にしているようだ。
コロナ期間を経て、その後のライブに集まった観客の声援や歓声、楽しんでいる様子を見て「主役はお客さんだな」と実感したことを話しつつ、直近のツアーERA TO ERAでもオーディエンスの力、お客様の力でツアーのパワーが増したエピソードも披露した。
「実は高知のライブではファンクラブ会員よりも一般販売の方が多く集まった」という、ツアー序盤の高知県でのライブはいつもとは違う状況であったことを話す。LUNA SEAのライブでの定番、真矢のドラムソロでの掛け合いで「ドンと僕がドラムを叩いて"オリャー"って叫ぶと、 "真矢!"って返ってくるところが、"オリャー!"に"オリャー!"って返ってきたの」と、高知では常連のSLAVEがビックリするコール&レスポンスがあったことを話すが、裏を返すと普段LUNA SEAのライブに来ていないファンが思い切り楽しんでいたからこその出来事だとも言える。続けて真矢は「そこでERA TO ERAはバーンと勢いがついた」と語った。
お客様のエネルギーを自分たちのエネルギーにし、また自分たちのエネルギーを次のお客様のエネルギーにしていく。こうしてERA TO ERAは41本のツアーの中で盛り上がりを加速していったようだ。
35周年の集大成、2月の東京ドームに向けて
そして2月に控える東京ドームでの2Daysについて伺うと、「東京ドームは音が山びこのように返ってくる会場なのでサウンドチェックから楽しみ」といたずらっぽい表情を浮かべる。
25年ぶりとなるGLAYとの対バンに話を向けると「GLAYとの対バンの日はね、お祭りの日のように楽しい一日にしたいな。対バンをやるからにはお互い真剣にね、自分たちの色を出し合う、そんな一日にしたいね」と、大のお祭り好きな真矢は熱い想いを込めて答える。
そして35周年ツアーのグランドファイナルとなるLUNATIC TOKYO 2025 -黒服限定GIG-については「いつもの黒服限定GIGは、旧名称のLUNACY、つまり初期の曲を演奏するものなんですが、今回の黒服はLUNA SEAとしての黒服なんです。ドレスコードは黒い服ですが、もしかしたら幅広い楽曲をやる。いつもとは違う黒服をお楽しみいただけるかな、と思っています」と真冬の東京ドームを熱気で覆いつくす勢いのある答えが返ってきた。
この黒服限定GIGに期待に胸を膨らませるインタビュアーが、再び1996年の真冬の野外のことに触れ、あの夜のクライマックスであった「ROSIER」から「HURT」へのつなぎはあるかと問うと「さあどうでしょう?」と真矢は笑顔で答え取材を締めた。
東京ドーム2日間はどんなライブになるのか?すでにチケットを購入している人は楽しみにして欲しい。もし、まだ行こうか迷っている方がいるのならば、その目と耳で何が起こるかを確かめていただき、思い切り楽しんでいただきたい。
そして最後に、数万人の熱狂を生み出すLUNA SEAの音楽を、ジェイテクト製のNiNjAベアリングが足元から支えられていることを喜ばしく思う。
取材後に普段は右手でLのポーズのところ左手でJのポーズをとっていただきました
LUNA SEAにはROSIERをはじめ、STORMやTONIGHT、Rougeなどドライブで聞くと心地よい楽曲がたくさんあるように、様々なミュージシャンの手掛ける楽曲はドライブの楽しさを演出してくれる。そのドラムサウンドをジェイテクトのベアリングが足元から支えることは、移動の楽しみの可能性を広げているものと言える。今後もジェイテクトは様々な形でモビリティ社会の未来を創るソリューションを提供していきたい。
参考リンク:
LUNA SEA オフィシャルサイト
https://www.lunasea.jp/
パール楽器製造 公式サイト
https://pearldrum.com/ja/
NiNjAベアリング 公式サイト
http://www.ninjask8.jp/